リンダグラットン氏著の「LIFE SHIFT(ライフ・シフト)100年時代の人生戦略」が出版され、早5年が経過し、日本国内においても「人生100年時代」という概念が一般的になりました。
我々の平均寿命は年々上昇し続け、多くの人が100歳まで生きるという時代はすぐそこにあるそうです。長く生きられるということは我々にとって喜ばしいことでもある一方で、それに伴い生じる様々な問題点もあります。
社会保険費の増大や年金予算の逼迫などマクロ経済的な課題はもちろんのこと、年金受給年齢の引き上げによって、労働者のライフサイクルも大きく変化することが予測されています。リンダグラットン氏の見立てでは、人生100年時代において、我々は75歳前後まで働き続けなければならないと言います。
生計を立てるために、高年齢まで働き続けなければならないという労働者サイドの悲痛な叫びと共に、高齢化した労働者層をどのように「リスキリング」「アンラーニング」していくかという課題に企業経営者は頭を悩ましているのです。
現在のテクノロジーの変化やビジネスサークルのスピードは凄まじく、数年単位で産業・マーケットにおけるディスラプション (想像的破壊)が発生します。今まで、価値のあったスキルや重宝されてきた経験が役に立たなくなるということが日常茶飯事であります。
こういった時代には、使えなくなったスキルや経験を忘れ (アンラーニング)、新たに必要なものを身に着ける(リスキリング)という姿勢が絶対不可欠です。とくに欧米では、年功序列的な概念が希薄で、企業は「今現在従業員が持ち合わせているスキル」に対してお金(給与)を払うという意識が強く、必要のなくなったビジネスや部署、人財をばっさりとカットすることも珍しくありません。
日本の労働市場においては、法的な制約や社会通念の下、ここまでドラスティックな施策を実行することは難しいため、このような部署や人財をどのようにリユースしながら新しいビジネスにつなげるかが経営者の腕の見せ所となります。
プログラミングや動画編集、SNS、ウェブマーケティングなど新たなスキルの習得を促し、外注している業務の内製化などに活かすことも可能です。市場におけるディスクリプション同様に、企業内においても業務設計のディスラプションを起こしていくことが必要です。
徹底した業務分析や市場の変化を捉えたジョブディスクリプションの作成、リスキリングにつながるような評価制度など定期的に人事制度・施策をアップデートしていくことが人生100年時代における中小企業には求められるのです。
これを読んで、「このままではまずい」と感じた企業経営者、人事ご担当者の方にはまず企業調査の実行をお勧め致します。
(D.S)