2023年People Managementで最も読まれた記事10選 ~Voice!for HRM Vol.104~

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こんにちは。コンサルティング&ソリューション事業部の田中です。弊社では、イギリスのICS Learn社と提携し、CIPD資格付与コースのお取り扱いをしています。

2023年も残りわずかとなりました。今回は、CIPDが運営するPeople Managementというサイトで、2023年に最も読まれた記事10選をご紹介いたします。(Steven Downes, 2023)イギリスのHRプロフェッショナル達は、どのようなトピックに興味を持ったのでしょうか?早速見ていきましょう!


【目次】
1.ブーメラン従業員の雇用
2.2023年の給与設定
3.休日手当に関する最高裁判所の判決
4.パートタイム労働者の休日手当に関する新しい法律に関する雇用主向けガイド
5.2023年の新しい雇用法
6.柔軟な働き方:新しいルール
7.2023年春季予算:雇用主のための6つの重要なポイント
8.人事専門家のほぼ半数がCOVID-19以前よりも多くの従業員人間関係の問題に対処していると主張していることが調査で判明
9.イギリスの労働者の1/3がパフォーマンス的な仕事に費やされていることが調査で判明
10.適切なリーダーシップトレーニングを受けていない”Accidental Managers”が、従業員のほぼ3人に1人の離職につながっていることが調査で判明

1.ブーメラン従業員の雇用

Robert Waltersが3000人の専門家を対象にした調査では、回答者の4分の3がパンデミック以前の雇用主に戻ることに前向きであることがわかりました。しかし、管理者の44%が元従業員をチームに戻すことに消極的であることも分かりました。

ブーメラン従業員の雇用については、「再び辞めるリスクがある」「長く勤務している従業員が不快感を感じ、エンゲージメントを失うリスクがある」という懸念点があります。従業員の過去の退職理由に確実に対処するとともに、潜在的なリスクについて透明性を持ち、ブーメラン従業員が提供する機会と利点をラインマネージャーに十分に伝え、懸念に対処する必要があります。

一方で、ブーメラン従業員を雇用することの利点もあります。ブーメラン従業員は、オンボーディング時に新人スターターが通常必要とするような導入や新人研修を必要としません。純粋に「費用対効果」の観点から言えば、多くの場合、最初の数か月間は予想よりもはるかに高い生産性が得られます。これは、より広範なチームに利益をもたらし、従業員のモチベーションと全体的なパフォーマンスにもプラスの影響を与えるでしょう。

Robert Walters最高経営責任者(CEO)のToby Fowlston氏は、経営者の躊躇について、次のようにコメントしています。「世界の人材採用市場は2023年に若干減速するものの、候補者不足は続いている。ビジネスに再参加する可能性のある人材が豊富に存在するという事実は、リーダーたちを興奮させるはずだ。」

(Arunth Sriganthan, 2023b)

2.2023年の報酬設定

報酬見直しに対するバランスの取れた参加型のアプローチを達成するための、裁量の方法についてアドバイスした記事です。Duncan Brown氏は、下記の6点を推奨しています。

①外部データを賢く選択して利用する
ONSやその他の信頼できる情報源から得られる、基礎となる労働市場と雇用統計に直接アクセスする。

②外側ではなく内側を見る
自社の戦略、成長計画、現在および将来の財務状況を検討して、支払える給与額を検討する。ただし、従業員の離職率も考慮し、今後12ヶ月間およびそれ以降の従業員のニーズと人財確保の計画も立てる。

③上ではなく下を見る
インフレ圧迫で苦しんでいる低賃金労働者に目を向ける

④短期的だけでなく中期的にも目を向ける
複数年にわたる契約について説得力のある主張をする

⑤基本給以外にも目を向ける
健康と福祉の福利厚生、特に精神的健康と経済的幸福の向上をサポートする福利厚生は、現在、大規模な従業員の採用、定着、報酬の提供に不可欠となっています。CIPDが述べているように、良好な健康と幸福は、従業員のエンゲージメントや組織のパフォーマンスを実現する中核となる可能性があります。

⑥「話すのは良いことだ」と認識する

(Duncan Brown, 2023)

3. 休日手当に関する最高裁判所の判決

2019年、北アイルランド控訴裁判所は、職員が長年にわたって受給する権利のある休日手当を受け取っていなかったとする判決を支持しました。この判決により、誤って計算された休日手当の遡及請求が行われる可能性があります。

人事チームは雇用契約、休日手当、休暇慣行について見直し、専門家にアドバイスを求め、全従業員に適正な支払がされているかを判断するべきです。基準から外れている場合には、潜在的な支払を計算し、行動計画を決定することが必要になります。

(Mahalia Mayne, 2023b)

4.パートタイム労働者の休日手当に関する新しい法律

イギリスではパートタイム労働者や非正規労働者の休日手当を改革する法案が2024年1月から施行される予定です。計算を簡素化するだけでなく、パートタイム労働者や不規則な時間で働く労働者に対してrolled-up holiday payを認め、雇用主が時給に加えて休日手当を加算できるようにすると発表しました。

Professional PassortのCEOであるCrawford Temple氏は、「労働者た自分達の労働条件を理解できるようにし、休日手当を受け取る権利と、正しい金額を確実に受け取れるようにする方法が重要である。」と透明性の重要性を述べています。

(Juliette Rowsell, 2023)

※rolled-up holiday payとは
休暇として取得した時間に対して、従業員に休日手当を個別に支払うのではなく、休日手当を積み上げ、年間・または給与期間を通じて均等に配分する方法。(Karis Lambert, 2023)

5.2023年の新しい雇用法

2023年にHRが知っておくべき雇用法について紹介した記事です。介護休暇に関する法案、妊娠・産休・家族休暇中の再雇用の権利に関する法案、内部告発に関する法案などが紹介されています。

また、職場でのハラスメントについての改正法も取り上げられており、従業員や労働者に対するセクハラ防止の法的義務や、第三者(顧客・サービスユーザーなど)から従業員に対するいやがらせに対する雇用主の責任についても言及されています。

(Audrey Williams, 2023)

6.柔軟な働き方:新しいルール

2022年12月、イギリス政府は「柔軟な働き方をデフォルトにする」という提案を実施する計画を発表しました。提案された変更は次の通りです。

①フレキシブルな勤務を要求する権利を、初日から認める(26週間勤務後から初日に変更)
②雇用主が柔軟な勤務要求について話し合い、他の選択肢を検討することなく申請を拒否することを禁止する
③従業員が12ヶ月間に2回の柔軟な勤務リクエストを行えるようにする(1回から2回に変更)
④雇用主が柔軟な勤務要請に応じる期間を2ヶ月に短縮する(3ヶ月から2ヶ月に短縮)
⑤申請者が雇用主への潜在的な影響を説明し、その影響を軽減できる方法を提案するという要件を削除する
⑥現行法は、従業員が一時的な期間のみ柔軟に働く権利を申請することを禁止していないという認識を高める。

(Stephen Morrall and Sophia Smout, 2023)

記事の中では、これらの変更に対するビジネス界の反応や考察がまとめられています。

7.2023年春季予算:雇用主のための6つの重要なポイント

イギリスのJeremy Hunt首相は3月15日に春季予算案を提出しました。その予算案は人々を「仕事に戻す」ことに焦点を当てており、雇用主と人事が考慮すべき点が数多くありました。People Managementは、予算発表を下記の6つのポイントにまとめています。

①障がい者の就労を支援する「ユニバーサルサポート」制度
②人々が働き続けるための労働衛生へのさらなる支援
③50代以上向けの見習い制度
④年金税引き下げにより高度なスキルを持った人材を雇用し続ける
⑤働く親を支援するために保育料を軽減する
⑥投資を奨励するために法人税を引き上げる

(Elizabeth Howlett ,2023)

それぞれのポイントについては、記事の中で詳しく説明されています。

8.人事専門家のほぼ半数が、COVID-19以前よりも多くの従業員人間関係の問題に対処していると主張していることが調査で判明

Wade Macdonaldの調査では、人事専門家のほぼ半数がパンデミック前よりも、現在、より多くの従業員関係(ER)問題に取り組んでいると主張していることが分かりました。ER問題増加の最大の理由は苦情の増加であり、福利厚生(39%)、在宅勤務/ハイブリッド制度(36%)、EDI(19%)などの苦情分野が挙げられました。

背景としては、幸福とメンタルヘルスに対する意識の高まりが従業員に力を与えたこと、従業員が自分達の法的権利についてよりよく理解できるようになったこと、職場での行動が企業価値に反している場合には、従業員に声を上げるよう奨励する企業文化が見られること、などが挙げられます。

リモート勤務とハイブリッド勤務により、従業員のエンゲージメントはこれまで以上に複雑になっています。AdvisorPlusのHRソリューションディレクターであるDan Phipps氏は、従業員の人間関係の問題の根本的な原因をより深く理解し、その発生を防ぐための予防的な措置を講じることを提案しています。

(Arunth Sriganthan, 2023a)

9.イギリスの労働者の1/3の時間がパフォーマンス的な仕事に費やされていることが調査で判明

Slackの調査によると、従業員は勤務時間の32%をパフォーマンス的な仕事(生産的であるように見せるために行われるタスクですが、会社の目標には貢献していない仕事)に費やされていることが分かりました。(Slack, 2023)イギリスの労働者の37%が、オフィスやオンラインで過ごした時間などの可視性によって、自分の生産性が評価されていると考えていることも判明しました。これが、パフォーマンス的な作業に費やす時間の原因である可能性が高いと、Slackは結論付けています。

雇用主は成果を達成するために費やす時間ではなく、成果の質に焦点を当てる必要があります。企業は従業員に必要な成果を明確に示し、その成果に関連する評価を重視する必要があります。

(Grace Lewis, 2023)

10.適切なリーダーシップトレーニングを受けていない”Accidental Managers”が、従業員のほぼ3人に1人の離職につながっていることが調査で判明

Charterd Management Instituteが4500人以上の労働者と管理者を対象に実施した調査では、管理職に就いた人の82%が適切な訓練を受けておらず、Accidental Managers(偶発的管理者)として知られることが判明しました。また、マネージャーの31%と従業員の28%がマネージャーとの否定的な関係を理由に仕事を辞めたことがあることがわかりました。

マネージャーの5分の1(18%)は自分のリーダーシップ能力に自信がなく、半数以上(60%)は自信はあるが、さらなる能力開発が必要だと答えています。訓練を受けた管理者は、パフォーマンスや行動の低下に対処する能力が優れているだけではなく、従業員が成長し、離職率を下げ、信頼と生産性の文化を育む環境を整える能力も備えています。

(Mahalia Mayne, 2023a)

今回は2023年のHRトピックを振り返ってみました。2024年はどんな1年になるのでしょうか?
CIPDは「Championing better work and working lives around the world」を理念に掲げ、仕事と労働環境を良くすることを目指しています。全ての人の働く環境が少しでも良くなるよう、来年も不定期に情報発信していこうと思います。今年も1年間大変お世話になりました!

参考

Arunth Sriganthan (2023a)
Almost half of HR professionals claim they are dealing with more employee relations issues than before Covid, study finds
https://www.peoplemanagement.co.uk/article/1820429/almost-half-hr-professionals-claim-dealing-employee-relations-issues-covid-study-finds
2023/12/28 閲覧

Arunth Sriganthan (2023b)
Two fifths of managers are reluctant to hire ‘boomerang’ employees, research finds
https://www.peoplemanagement.co.uk/article/1819646/two-fifths-managers-reluctant-hire-boomerang-employees-research-finds
2023/12/18 閲覧

Audrey Williams (2023)
New employment laws for 2023
https://www.peoplemanagement.co.uk/article/1810546/new-employment-laws-2023
2023/12/28 閲覧

Duncan Brown (2023)
Pay setting in 2023: how much should you award?
https://www.peoplemanagement.co.uk/article/1815994/pay-setting-2023-award
2023/12/28 閲覧

Elizabeth Howlett (2023)
Spring budget 2023: six key points for employers
https://www.peoplemanagement.co.uk/article/1816619/spring-budget-2023-six-key-points-employers
2023/12/28 閲覧

Grace Lewis (2023)
Third of UK workers’ average day is lost to performative work, survey reveals
https://www.peoplemanagement.co.uk/article/1828682/third-uk-workers-average-day-lost-performative-work-survey-reveals
2023/12/28 閲覧

Juliette Rowsell (2023)
An employer’s guide to the new laws on holiday pay for part-time workers
https://www.peoplemanagement.co.uk/article/1847541/employers-guide-new-laws-holiday-pay-part-time-workers
2023/12/28 閲覧

Karis Lambert (2023)
Understanding rolled-up holiday pay
https://www.moorepay.co.uk/blog/understanding-rolled-up-holiday-pay/
2023/12/28 閲覧

Mahalia Mayne (2023a)
‘Accidental managers’ without proper leadership training contributing to almost one in three workers walking out, research finds
https://www.peoplemanagement.co.uk/article/1844443/accidental-managers-without-proper-leadership-training-contributing-almost-one-three-workers-walking-out-research-finds
2023/12/28 閲覧

Mahalia Mayne (2023b)
Supreme Court’s landmark holiday pay ruling – what HR should do now to prepare for the fallout
https://www.peoplemanagement.co.uk/article/1840199/supreme-courts-landmark-holiday-pay-ruling-%E2%80%93-hr-prepare-fallout
2023/12/28 閲覧

Slack (2023)
State of work 2023
chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://d34u8crftukxnk.cloudfront.net/slackpress/prod/sites/6/State-Work-Report.en-US.pdf
2023/12/28 閲覧

Stephen Morrall and Sophia Smout (2023)
Flexible working: the new rules
https://www.peoplemanagement.co.uk/article/1811683/flexible-working-new-rules
2023/12/28 閲覧

Steven Downes (2023)
People Management’s 10 most-read stories and opinion pieces of 2023
https://www.peoplemanagement.co.uk/article/1851403/people-managements-10-most-read-stories-opinion-pieces-2023
2023/12/28 閲覧