もう限界、歯止めがきかない人材不足–解決のカギは「移民」一択– ~Voice! for HRM Vol.78~

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世界中で新型コロナウィルスの変異株「オミクロン株」が猛威を振るう中、日本政府は外国人の新規入国停止に踏み切りました。この入国制限は、日本で働く外国人や日本に家族を持つ外国人そして外国人労働者を多く雇用する介護・福祉業界にも深刻な影響を及ぼしています。

日本の少子高齢化に伴う人材不足は非常に深刻で、介護・福祉、医療、飲食、ITなど様々な業界に影響が及び、多くの企業が外国人労働者の雇用に活路を見出してきました。近年では、飲食チェーンやコンビニ、ホテルなどでも外国人労働者を目にする機会が増えてきました。そういった意味で、今回の入国制限は、様々な業界における外国人労働者への依存度合いを可視化する契機となりました。

そもそも日本における外国人労働者の増加は、バブル経済下における人材不足をきっかけとして始まりました。好景気と円高により、周辺のアジア諸国の移民労働者が金銭的メリットを見出したことで、日本への出稼ぎ文化が始まったと言えます。

移民労働者の数は年々増え続け、現在250万人に上るとも言われています。それにも関わらず、人材不足は改善されるどころか、むしろ悪化していると言えます。今後日本の人口動態が大幅に変化することもあまり期待できないため、外国人労働者の招致は日本の産業全体としての喫緊の課題と言えます。

移民がdestination (行き先)に求めることは、

「経済的メリット」

■「定住のしやすさ」

この2点に尽きます。これは、アメリカやイギリス、フランスやドイツなど欧米圏での移民研究の結果でも明らかになっています。労働移民の多くは自身の生まれ故郷よりも高い給与水準で、言語的・宗教的・習慣的ハードルが低い国に移動したいと感じます。アメリカやイギリスといった西欧先進国では、賃金水準が軒並み高く、様々なバックグラウンドを持った人々が順応しやすい環境にあります。子育てや宗教儀式などを支えるコミュニティやインフラも整備されているため、定住しやすいと感じるためです。

シンガポールなどの新興国においても、様々なバックグラウンドを持った人たちを歓迎する社会的仕組みが整備されており、富裕層からブルーカラー労働者まで多くの移民を魅了してきました。

こういった問題は、歴史的背景や国全体の政策に関わるため、企業・組織レベルでは対処できるものではありません。しかし、移民を引き付けるロジックを企業が応用することは可能だと言えます。例えば、在日外国人が抱える問題として多く挙げられるのは、「粗悪な採用エージェントからの搾取」「国際的子育て環境の乏しさ」「コミュニティの欠如」「労働時間・柔軟性」などです。

今後、移民に活路を見出そうとする企業経営者は上記のような移民の要望に応える人事制度・施策を打ち出していく必要があります。

                                                       (D.S)