Churchill, F: CIPD Annual Conference 2021: Businesses have ‘once in a lifetime’ chance to change the world of work, says Gratton. People Management. 2021,
ロンドン大学ビジネススクール教授はHR/人事の専門家に対し、長期に渡る「仕事の再設計」の必要性を説きながら、今年度のハイブリッドイベント (リモート・オンサイト混合)を開始した。
「企業は今まさに我々の働き方を再認識する絶好の機会に恵まれている」とリンダグラットン氏は参加者に訴えかけた。
ロンドン大学ビジネススクールマネジメント学科教授であるリンダグラットン氏は
基調演説の中で、「一連の労働市場の変動は我々が未来の働き方を再考、再構築する上で非常に有利な状況を創り出していると言える」と述べた。
「組織の中で退職率がゼロだとしたら、CEOは特に何も変える必要がないかもしれない。しかし、50%の従業員が転職活動をしていて、DX領域への投資額が急激に増加している。こういった状況は我々が取るべきアクションを考える上で非常に重要である。」
パンデミックによって引き起こされたこの2年間の混沌状態にも関わらず、グラットン氏は、「今後は高齢化による人口動態の変容だけでなく、更なる長期的な変化が起こるだろう。HRはこういったことについて考え始めなければならない」と述べた。
「2022年1月までに長期的な仕事の再設計が出来なければ、あなた方は自らの仕事をきちんと全うしていないことになる」とグラットン氏は続けた。
「従業員に未来の働き方についての希望を聞くことは重要であるものの焦点を置くべきは生産性である」とグラットン氏は警告した。「もしいまのやり方が生産性を増加させないのであれば、来年の同じ時期に一旦取りやめればよい」。グラットン氏は2013年にYahooが行ったリモートワーク廃止の意思決定について言及した。
「Yahooは一時期にはいつでもリモートワークを歓迎するスキームを導入した。そしてその後CEOは生産性が低下しているためリモートワークスキームを撤回し、オフィス復帰を全従業員に命じた」。「ここで言いたいことは、生産性にフォーカスしなければならないということである。仕事を再設計するために行う全てのことは人々をより生産的にすることでなければならない」。
「同様に企業が未来にオフィスの使い方について考える際に、生産性が全面的かつ中心に据えられなければならない。例えば、開放的なオフィスは集中力という観点ではあまりオススメできない。なぜなら出社して、従業員が皆ヘッドホンを着用して、コンピューターと対峙することになるからである」。
「オフィスを生産的なものにしたいのであれば、従業員が出社してヘッドホンを着用する以上の場所にしなければならない。実際に従業員が出社していることを有効的に活用するべきである。これらはとりわけ、メンタリングやコーチングそして初期研修が必要な若手従業員にとって非常に重要である」。
グラットン氏はHRプロフェッショナル達がどのように企業の働き方を変えるかについて想像的になる必要性を説くのと同時に、2つの質問を自らに問うことの重要性を語る。
- 組織を導く原理・原則とは何か
- 守るべき組織の特性とは何か
「これが組織の独自性である。これが他の組織との差別化を生む要素である。パンデミックが終焉するにつれ、企業間のやりとりにも多様性が生まれると私は推測している。」
CIPDのCEOであるPeter Cheese氏は会議の冒頭で、この2年間で労働力に対する展望が大きく変化したと述べた。
「人々は、いつもの日常から離れ、様々なことについて考えるようになった。これは自分にとって良いものか。会社は自分のことを思ってくれているか。会社は自分としっかり向き合ってくれているか。自分を支えてくれているか。自分とつながっているか。」
「組織としてこういった期待に応えられていなければ、今後退職が益々増えるだろう」
Cheese氏は近年重要性を高めているwellbeingについても述べた。
「この数十年間で我々は多くのことを見失った。効率性やコストや生産ユニットとしての人的資源にばかり注目してきた。いまこそ現実に戻るときである。人間について考えることである。人間の中心にあるもの、それこそがwellbeingという概念なのである」とCheese氏は述べる。
(D.S)