緊急時代宣言も明け (2021年10月25日現在)、世の中は本格的にポストコロナへ向け動き始めました。オフィス勤務解禁の動きも見られ、いよいよ通常営業再開といったところでしょうか。
しかし、果たして若年労働者とりわけZ世代の若者はリモートワーク体質から脱却し、これまでの働き方に順応することはできるのでしょうか。今後の動向を予測するためには、Z世代の特性 (Z世代に関する記事はこちらをご覧ください)や職業倫理感そして、昭和世代とのギャップについて深い理解を持つことが重要です。
株式会社クロス・マーケティングの20歳から39歳の男女を対象とした「若手社員の出世・昇進意識に関する調査」によれば、約60%が「出世したくない」と回答したことがわかりました。また、「2021年卒マイナビ大学生就職意識調査」によれば、学生の職業観として多かったのが「楽しく働きたい (35.8%)」、「個人の生活と仕事を両立させたい (24.3%)、「人のためになる仕事がしたい (13.7%)」であり、役員や管理職への昇進や高い報酬を得て、購買力を高めることを原動力としていた昭和世代とは大きく異なっていることがわかります。
そして、Z世代のシンボルとして多く挙げられるのが「生粋のデジタルネイティブである」ことそして「プライベートと仕事の線引きを明確にしている」ことです。このような特性を持つ若者にとってリモートワークとは非常に魅力的かつ合理的な働き方といえます。朝早く満員電車で通勤する必要もなく、パソコン画面をオフにするのと同時に人間関係をシャットアウトすることができるためです。パンデミック禍でリアルな通勤・通学を経験していない世代にとって、オフィス勤務とは未知の連続であり、苦痛そのものであることが予測されます。
その結果、いままでのようなオフィス勤務への移行は退職率の莫大な増加、生産性低下(プレゼンティズム)を招くだけでなく、職場としての企業の魅力度(Employer Branding)を損なう可能性も否めません。日本企業よりもラディカルな人事施策や改革を推し進める欧米企業が全面的なオフィス解禁に踏み切れないのもこういった背景があるためです。今後は、働く場所や時間の柔軟さがEVP (雇用者が社員に付与できる価値)となり、優秀な若者獲得へのカギとなることは明らかです。
若者の業務満足度を優先し、リモートワークを続行するか、若者の価値観の矯正を組織全体で促すのか、これは経営判断そのものです。今後、組織としてどのような事業展開を検討し、どのような顧客にどのようなサービス・価値を提供していきたいかをしっかりと考える必要があります。その上で、働き方の柔軟さを含め、どのような人事制度・施策が必要かを定期的に確認する必要があります。
(D.S)