-「今どきの若いモンは何を考えているかわからない」
-「俺たちの時代じゃ考えられない」
-「仕事をなめているとしか考えられない」
このような悲痛な叫びが様々な業種業態の企業経営者から聞こえてきます。いつの時代でも、「今どきの若者は」論争はある程度避けられないでしょう。しかし、近年の中高年 vs. 若者の対立構造は、職業倫理観そのものを根底から覆すものであるかもしれません。
「Z世代」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。Z世代とは別名「デジタルネイティブ世代」とも呼ばれ、高速インターネットやスマホ、SNS、AIなどと共存する現在16歳から24歳の世代を指します。この世代は自分たちとは別世界にいると錯覚している方も多いとは思いますが、彼らはもう既に労働市場に放たれているのです。つまり、このようなZ世代の若者と手を取り合ってあるいはしのぎを削って仕事をしなければならない時代に突入しているのです。
米国メディアのAwesomeness社の調査によれば、全世界的にZ世代の若者は「既存のルールに囚われない」という共通点があるそうです。LGBTや、Modern Slave (職場における労働者の人権)、人種差別撤廃、SDGsなど今までは当然のこととして蔓延していた概念を180°変えるためのムーブメントが世界的に勃発していることは周知のことかと思います。この動きと共鳴し、職業倫理観も大きく変容しています。
「なぜ働くか」「幸せとは何か」といった哲学的問いかけは数世紀にわたって議論されてきました。しかし、Z世代の若者にとっての職業倫理観とは実にシンプルなようです。自分のやりたいことを実現するための手段あるいは個人のステップアップのための機会として仕事を利用するという倫理観がこの世代には共通しています。そのため、組織・職場はこういった機会を単に提供するプラットフォーマーであるということになります。つまり、帰属意識や忠誠心といった概念は非常に希薄化しているということです。
例えば、厚生労働省の調査によれば、中小企業における新卒入社後3年以内の退職率は約50%に達していると言われています。つまり、仕事が面白くないと感じればすぐに躊躇なく辞めてしまうのです。このマインドセットが良いか悪いかは別として、このような世代と共に仕事をし、業種によっては彼らにモノを売らなければならないのです。アメリカでは人口の4分の1 (約8270万人)がこのZ世代にあたり、この購買層を取り込むことが企業の明暗を分けるとも言われています。高齢化が進む日本では、年配層に富と権力が集中し、この世代を中心とした政策やルール、常識、倫理観がスタンダードになります。しかし、この常識や倫理観を是とする理念や働き方、評価制度を続行することはサステナビリティ (持続性)の観点ではかなり無理があります。採用しては辞め、恒常的に人員不足を繰り返すということになりかねません。これを避けるために、忠誠心のありそうなイエスマンばかりを選択的に採用することも今後の発展につながりません。アメリカの研究では、ダイバーシティーを行う企業と伝統の保守を重んじる企業の間では、成長率に大きな差が見られることも指摘されてきました。
それではこのパラダイムシフト下では何を行えばよいのでしょうか。早急に行うべきは人事施策の見直しです。世界5か国でグローバル企業の人事施策支援を行ってきましたが、成長する企業、時代に即し生まれ変わりを果たす企業に100%共通していることは「全社的な職務定義の策定」「科学的な選考」「職務定義に根差した評価」「優秀な人財のリテンション」が実施できているか否かです。裏を返せば、経験や勘に根差した採用や飼い慣らしを主眼とした人材マネジメントを行う企業は高確率で凋落するということです。
「全社的な職務定義の策定」「科学的な選考」「職務定義に根差した評価」「優秀な人財のリテンション」とは具体的にどういうことでしょうか。簡単に言えば、従業員に任せる業務内容や責任レベルを経営層レベルでしっかりと定め、その業務を最適に遂行できる人物像を具体的に策定した上で採用・選考を行い、決められた職務・職責の範疇で適切に評価を行うこと、そして優秀な人財には報酬や権限を付与することで他社流出を防ぐことです。「言うが易し、行うが難し」ではありますが、企業経営そのものも「千里の道も一歩から」ではないでしょうか。ヒトの採用やマネジメントは企業経営で最も重要な取り組みです。採用・選考のミスや不健全な退職は企業存続を脅かすため意思決定には細心の注意を払う必要があります。しかし、注意を払いすぎるあまり、何もしなければ後退するばかりです。
最後に
弊社は、従業員の採用から退職までの企業ライフサイクルに沿った川上から川下までの人事施策支援を行っております。弊社のコンサルタント陣は、「採用・選考」「研修」「人材育成」「評価」「報酬」「退職」の各分野で経験豊富な専門家を集めております。単なる頭数集めの採用やコンテンツ販売ではなく、各ステージで貴社にとって最適なソリューションを伴走しながら構築いたします。
(D.S)