「感情労働(者)」という概念は、1983年に社会学者であるHochschildによって定義され、職務に関する感情的要件を満たすために気持ちや表情をコントロールするプロセスを指す。労働者は、時に怒りを表す顧客や同僚、上司に加え自らの感情を同時にコントロールすることが要求されてきた。2000年以降世界的なサービス業時代の到来によって、感情を相手に業務を行う Emotional Labour が労働市場のニューノーマルとなった。
Emotional Labour は飲食店のホールスタッフやリテール販売員、ホテルスタッフ、コールセンターのオペレーターなどのいわゆるサービス業に加え、医療従事者や介護士などが含まれる。
パンデミックが流行する現在、Emotional Labour達は、様々なリレーションにおける感情と共に、「感染症」の危機に隣しながら、業務を行うことが要求される。概して、Emotional Labourは、顧客及び患者とのインテラクションを業務としており、リモートワークの実施が難しく、通勤やオフィス(現場)勤務が避けられない。
コールセンターの研究を長年行うPhil Tailor氏によれば、Emotional Labourは人間関係など社会的な要因、パソコンなどのオフィス周りの周辺的要因そして空調や温度など環境的要因によってストレスを感じる機会が多いという。また同氏は、Emotional Labourは他の職種と比較し、上記の要因が複合的に作用し、Burnout (燃え尽き症候群)やシックビル症候群に陥る可能性が高いという。コロナ禍では、これに加え、密状態での勤務に対する恐怖症を訴える従業員も多いという。
また、Tailor氏はパンデミックなど労働者が不安に駆られる時期には、徹底的な従業員満足度を実施し、社会的要因、周辺的要因そして環境的要因がどのように従業員に影響を与えるかを精査すべきであると述べる。調査の結果によって、然るべき施策を打つ必要がある。この作業を怠ればエンゲイジメントの低下やアブセンティズム (欠勤)に繋がり、マクロな視点での生産性低下にもつながるであろう。組織やその課題に沿った調査票の設計ができる調査会社と連携をしながら、対応をすることが重要である。
(D.S)