社内リスキング(再教育)の重要性–中小企業に求められる従業員のリカレント教育– ~Voice! for HRM Vol.85~

«
»

近年、労働市場における少子高齢化が加速し、マーケットの変化のサイクルが短縮されていることを背景に、労働者に求められるスキルも頻繁に変化してきました。

かつては、重宝されていたスキルや経験が「期限切れ」となり、もはや必要とされないということも少なくありません。今後、「期限切れ」というレッテルを課される人の割合が増加することが予測されています。

オックスフォード大学の研究によれば、2030年までにAIによって代替され得る仕事の数は約2千万に上ると試算されており、今後多くの労働者が職を失うことが予想されています。

こういったいわゆる「産業4.0時代」にはAIやロボット、DX、SNSなどの領域に多くのお金が集中するため、企業サイドとしてもこのような周辺領域での投資が必要となります。テクノロジーやSNSに関する知識やスキルを有する人財がいなければ、今後市場で生き残ることは難しく、こういったスキルを既に有している人財を新たに採用するか、既存の従業員にスキルを身に着けさせる必要があります。

新たに採用を行うには多額のコストがかかるだけでなく、既存の従業員の再利用が難しくなるため、持続性の観点でいえば、採用をし続けることは必ずしも得策とは言えません。

英国金融委員会及びコンサルティングファームPwCの共同研究によれば、既存の従業員のリスキリングを行うことは新たに採用を行うのに比べ、従業員ひとりあたり50,000ポンド (約770万円)のコスト削減につながるというデータが発表されています。

市場の流れやビジネスのトレンドに応じて、採用と解雇を続ければ、これらに伴うコストだけでなく、社外的な評判や従業員ロイヤリティの低下にもつながるため、間接的に売り上げや生産性の低下にもつながる恐れがあります。

リスキリングを行うために、まず必要なことは

・ビジネスを展開する市場が中長期でどう変化するかを論理的に予測する

・変化の中でどのようなスキルが必要かを捉える

・従業員がどのようなスキルを有しているかを調査・分析する

・従業員のポテンシャル (潜在能力)はどの程度かを把握する

です。在籍する従業員が有するスキルと今後必要とされるスキルの間のギャップを捉え、新たなスキル獲得に向けて全社を牽引するリーダーを決め、プロジェクトに取り組むことが重要です。L&D (学習・開発)に詳しい人財を今後採用していくことも持続的な組織を作る上で有益です。

 

(D.S)