‘Pingdemic (ピングデミック)’で閉業・倒産の危機? ~Voice!for HRM Vol.61 ~

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皆様は”Pingdemic”という言葉を耳にしたことがあるでしょうか?この言葉は、イギリスの国民保健サービス (NHS)が専用の追跡アプリ上で濃厚接触者に10日間の自主隔離を警告 (ping)することからpingdemicと呼ばれるようになりました。この警告が発動されると自主隔離が法的に強いられ、違反すると£1000 (日本円にして約15万円)の罰金が科せられることになります。日本でもNHSのアプリを模したCOCOAの使用が厚生労働省によって奨励されてきたものの普及率は1割台にとどまっています。一方、イギリスにおける普及率は40%を超えており、今後も拡大し続ける見通しです。

(出典: https://www.bbc.com/news/technology-57970603)

この追跡アプリが普及すると、ビジネスにはどのような影響が出るのでしょうか。現在イギリスでは、非常に多くの労働者がこの警告によって自主隔離を強いられ、その結果あらゆる産業で人員不足が発生しています。とりわけ、医療、サービス、リテール、流通業界ではこの自主隔離によって人的資源確保の観点で大打撃を受けています。イギリスではfurlough (一時休暇)制度の導入によって、自主隔離を強いられる労働者の賃金の8割が補償されるため、労働者への影響は最小限に抑えられています。しかし、雇用者サイドでは人員確保が難しく、この追跡アプリの更なる普及によって問題は更に深刻化されるとの見通しが立っています。

この問題は日本の労働市場にも無縁ではなく、7月以降の爆発的感染を鑑みれば、追跡アプリの需要はますます高まるのではないでしょうか。イギリス同様、日本の労働市場における人員不足は深刻であり、日本でpingdemicが発生すればイギリス以上にその影響を被るのではないでしょうか。日本でのテレワーク普及率はイギリスの半分程度と言われていますが、従業員数100人以下の企業を含めるとその差は更に大きくなるでしょう。

ウィズコロナ時代はこの先数年にわたって続くと想定され、これに伴って企業の閉業・倒産は相次ぐでしょう。こういった閉業・倒産は短期的な視点で見れば、パンデミックによって引き起こされた悲劇として捉えられるものの、長期的に見ればビジネス・仕事の性質のパラダイムシフトとして考えられます。仕事の性質 (The Nature of Work)は一定の周期で変化し、このパンデミックは変化の引き金になったと考えることもできます。テレワークは変化への対応度を測る物差し的な役割を果たしています。確かに、テレワークには様々な弊害があります。しかし、こういった社内の課題を解決するためにオーナーシップを取りながら力業で変化を起こすのは経営者の役割です。今後の変化に対応するためにもテレワークを導入することは非常に有効的です。

弊社は従業員30人規模の小さな会社ですが、2020年4月より現在に至るまで在宅勤務を実施してきました。環境構築から従業員のモチベーション維持など様々なハードルがあったものの、今までの売上や生産性を確保しながら働き方を変革することができました。弊社のノウハウを皆様にお伝えするために、テレワークに関するコラムを発信しております。8月5日にはLRM株式会社様と共催で「テレワークで”人財”と”情報”を守る5つのポイント」に関するウェビナーを実施し、多くの参加者の方にご好評いただきました。ウェビナーで使用した資料を共有しておりますので、是非ご活用下さい。

また、弊社は昨今の感染症流行に端を発するあらゆる人事課題解決に向け、日本では珍しいHR (人事)に特化した部署 (HRM推進室)を創設致しました。世界最大のHR資格付与組織CIPDから認定を受けたコンサルタントや30年以上の人事経験のあるコンサルタントが貴社のあらゆる人事課題の解決をサポート致します。採用の支援から評価制度の策定、離職率の低減まであらゆる人事課題に対応致します。

(D.S)