ROIという言葉を近年よく耳にする機会が多くなってきました。ROIと聞くと、費用対効果と想起する方が多くいらっしゃるかと思います。簡潔に表すとROIとは投資によってどのくらい利益を上げたかを確認するための指標です。数式で表すと利益 (売上利益-原価-投資額)÷投資額×100となります。ベネフィット (利益)を投資額で割ることで投資の利益率を算出し、利益が100%を超えているかすなわち黒字を出しているかを確認できるということです。
この数式そして概念は企業経営のあらゆる文脈で応用されてきました。慈善団体でない限り、投入したお金を回収するという構図は不可欠であることは言うまでもありません。しかしながら、このスキームを人事領域に活用することに関しては周辺学問の間でも多くの論争が繰り広げられてきました。HRという学問そして概念は社会の動きや人の心理そして人間関係など科学や数式の世界で理解される範疇を超えているためSocial Science (社会科学)の枠組みで考えられてきたからです。ヒトの幸福感ややる気などは様々なファクターの中で相互作用されるため、数式に当てはめて仮説を検証するといういわゆる科学的手法はナンセンスであると考えられてきたためです。
しかし、ビジネスの文脈では「ヒト」にまつわるコストは企業経営の中で多くの割合を占めています。とりわけ労働集約型のビジネスでは、人件費が売上高の過半数を占めるということも往々にしてあります。つまり、ヒトのコストに対しての意識が経営を左右するということになります。ヒトのコストとは通常、給与や移動コスト、社会保険費用として考えられます。しかし、ヒトを採用するということは前任者の補完として新しい人財を投入するケースが多く、前任者と同じパフォーマンスを上げるまでに要するリードタイムや教育コスト、機会損失そして退職の際に発生する生産性低下なども同時に考慮する必要があります。
イギリスの研究結果 (REC, 2019)によれば、年収500万円程度のマネージャーを採用し、ミスマッチのため退職してしまった際の経済的損失額は約1700万円まで上ると言われています。採用や選考にかかる人事部の給与や外注費、失われた生産性を加味すると多額のお金と時間が無駄になるということです。
採用や研修、リテンション、タレントマネジメントに対する投資額は年々増え続け、これらの領域にお金と時間そしてリソースを投入する企業は近年急速に増えてきました。採用支援やエンゲイジメント調査をアウトソーシングし、多額のお金を投じている企業も多いのではないでしょうか。しかしながら、これらの領域における投資の見返りを財務的指標で評価している企業は少ないのではないでしょうか。
人事 (組織)コンサル会社に数千万単位のフィーを払っているにも関わらず結局目に見える効果が得られなかったというのはよくある話です。退職者の給与や後任採用にかかる日数やコスト、外注内容と費用、人事部の人件費などの情報を基に従業員退職の際に発生する損失額の計算を行うことが可能です。こういった損失額を意識し、これまでの人材投資が適正かつ効果的なものであったかを確証する必要があります。人材は組織の心臓であり、ヒトへの投資は非常に重要です。他の投資と同様に、組織として多くのリターンを最大化できるように可視化することが重要です。それに先駆け、まずは貴社の中でどこに課題があるのか、またその課題を解決することでどのようなメリットを得ることができるのかを可視化しておくとROIの最大化をしやすくなります。
貴社における退職の際に発生する経済的損失額の試算をしてみませんか?損失額とその内訳を知ることでこの不況を乗り切るための策を考えてみませんか?ご興味のある方はこちらからお問い合わせください。
(D.S)