ご周知の通り、「従業員満足度」と「企業の生産性」や「従業員退職率」の相関性は様々な研究で明らかにされ、従業員の業務や職場に対する満足度を向上させようという動きは10年以上続いてきました。従業員のポジティブさや幸せ度そしてエンゲイジメントに関する議論はアメリカで1980年代から盛んに行われ、1985年度前後に米Gallup社によって体系化されました。それ以降、欧米を中心にES (従業員満足度)なるものが確立されました。2010年前後から日本でもその重要性を唱えるムーブメントが拡散し始めました。統計的にも、仕事に前向きな従業員の多い組織ほど利益率が高いことは明らかとなってきました。従業員満足度調査はもはや多くの企業にとって毎年(ないしはそれ以上)行われるイベント事になりました。
雇用者として、従業員が前向きでいるか、幸せに職業生活を送っているかを定点的に確証しようとする姿勢は不可欠であります。HRの観点で、欧米やアジアの先進諸国 (シンガポール、マレーシア、香港、中国等)に遅れをとる日本(CIPD, 2020調べ)における人的資本への投資拡大の第一歩であるといえます。
しかし、「The Training Measurement Book」の著者にしてHR研究者であるJohn Bersin氏によれば「企業が定期的に行う従業員調査・エンゲイジメント調査は時代遅れである。より全体的に統合された事業戦略、HR戦略的アプローチに則ったやり方で従業員の施策への認識や満足度を測定し、より良いものを創り上げるための手段でなければならない」と述べています。
Bersin氏が言うところの「全体的に統合された」というのは人に関する施策は企業全体の事業戦略とalign (整列)してなければならないということです。その上で、このHR施策が上手く機能していたかをHRの機能一つ一つに照らし合わせながらレビューをする必要があります。具体的にHRの機能とは、①採用・選考 ②オンボーディング・初期研修 ③トレーニングとスキル開発 ④評価・報酬 ⑤行動と規律 (コンプラ遵守とリスクマネジメント) ⑥従業員参画と組織(風土)変革の6つに収束します (Huczynski and Buchanan, 2010)。
そのため、人事部主導で行う調査の目的とねらいはこの6つの施策が上手く機能しているのか、新しく施策を導入・変更した場合どのようなインパクトをもたらしたかそして未来の施策にむけて何をすればよいのかを確認することです。
eNPSやエンゲイジメント調査、パルスサーベイといった企業が定期的に行う調査は「以前のスコアと比べてどうだったか」「競合他社を比べてどうか」といった具合に数字を追うことにフォーカスしており、HRが行うべき領域をカバーできているとは言えません。この理由として、既存のサーベイは
- HRドリブンな調査をねらいとしていない
- サーベイを行った後に取るべき行動から逆算していない
- HR領域の専門家が監修していない
ことが挙げられます。
弊社の展開する、企業内コミュニケーション診断~カイシャの健康診断~では、サーベイを人事の面倒なイベント事として形骸化させないことを念頭に置き、HR/人事の1年間の施策の振り返りから未来の施策を作成する上での重要なエビデンス提供を行っております。また、世界最大のHR団体から認定を受けたコンサルタント及び複数の外資系企業にてHR Head of Japanを兼任したコンサルタントが人事にとってチェックすべき必須項目を厳正にチョイスし、慶應義塾大学井上教授監修のもと開発致しました。
※カイシャの健康診断は2024/1末をもって終了いたしました。ありがとうございました!
(D.S)