欧米では新型コロナウィルスのワクチン接種が開始されてから早3か月近くが経過し、経済活動再開の目途が立ってきたと言えるだろう。日本においても医療従事者や高齢者を中心に接種が開始され、2021年内に国民の約60%へのワクチン接種が行われるとの見通しである。ワクチンが普及し、その有効性そして安全性が検証されれば我々の生活はビフォーコロナに限りなく近づくかもしれない。
確かに、飲食や旅行などの機会増加に伴い、人のモビリティが増えればその効果は様々な業種・業界に恩恵をもたらすであろう。しかし、働き方や我々のライフスタイル全てがパンデミック以前のように戻るかは疑問である。例えば働き方の観点でも、在宅勤務は高齢者や障がい者そして子育てを行う労働者にとってワークライフバランスが確保しやすい環境を提供している。そのため、リモートワークは多様な働き方を可能とし、多様な人財が労働市場で活躍する上で必要不可欠な要素である。ところが採用や研修そして生産性など雇用者が懸念すべき問題は山積みであるため、オフィス勤務がなくなるまたは劇的に減少することは現実的ではない。
慶應義塾大学井上逸兵教授は「今後、ビジネスの世界ではオフィス・リモートワークのハイブリッド型が主流になるだろう。とりわけ作業系の業務に関しては在宅勤務の方が捗ると感じる労働者が多く、リモートワーク機会が無くなるというのはあり得ないでしょう。また、労働者そして働き方の多様性を尊重するグローバルトレンドもある程度定着しており、リモートワークはアフターコロナでも積極的に活用されるだろう。今後はオンライン、対面という2つの文脈で高いパフォーマンスを発揮できる人財の獲得がアフターコロナを生き抜くために企業が尽力すべきことでしょう」と述べている。
その上でまずはリモートワーク下で活躍する人財とは何かを考える必要がありそうである。株式会社bajjiの代表で、ビジネス・ブレークスルー大学 准教授の小林慎和氏によれば、対面で一度も会ったことのない人と信頼関係を構築することがリモートワークを行う上で非常に重要であると言う。このようにリモート上で相手とラポールを築くことをリモートトラストという。
今後は直接顧客やパートナーと対面せずにビジネスを構築し、完結させる局面も増えていくと予想され、ソフト面及びハード面で今までとは違ったスキルの獲得が必要となる。
弊社では、リモートワーク下で活躍するために必要な能力を以下の5つに定義している。
①業務遂行に必要な情報を躊躇せずに共有、伝達そして収集できる能力
②オフィス外で日常的及び中長期的な目標を実現可能レベルで自ら立て、タイムリーに成し遂げられる能力
③SNSやデジタルテクノロジーを駆使して、コネクションを構築し、顧客やパートナーとのラポール形成 (リモートトラスト)を行う能力
④在宅空間でビジネスマナーに順守した行動ができる能力
⑤ストレス耐性・レジリエンス
リモートワークを活用した働き方の中で、企業(あるいはチーム)が、健全にそして持続的に成長するためには上記の5つの能力をミクロそしてマクロ単位で身につけることが不可欠である。企業(あるいはチームとして)、この5つの能力を持ったプレイヤーを育てるためには、今の組織内の状態を可視化することが重要である。
(D.S)