財政危機と HRM
財政危機と HRM 。このトピックは長年HRMの研究対象となっています。HRMは1980年代の終わりより唱えられてきたマネジメント一派であり、学問としてまたプラクティカルなマネジメントの手法としても約40年と比較的歴史が浅いというのが現状です。そのため、グローバルな金融危機というと2008年のリーマンショックに端を発する金融危機が初めてということになります。では、この金融危機の際にはビジネス界にどのような影響があったのでしょうか。
2008年を境に、HRMのアウトソーシングつまり会社の核となるビジネス以外は外部に委託してしまおうという流れが起きました。ユニリーバを筆頭とした世界的な企業がHRM部署の多くの業務をアクセンチュアといったコンサル機関に外注することでコストを抑えようとする試みがなされたのです。確かに、HRMの部署ではペイロールや書類整理など不必要で非効率な作業は多く見られたのは事実ですが、会社の最も重要な人財を司るHRM (日本でいう人事部)機能を外注の会社に委託することでコミュニケーションに大きな問題が生じたというのが現実でした。
ではなぜHRMという部署は軽視されてきたのでしょうか。名優クリント・イーストウッドが主演を務める「ダーティハリー」という映画のなかで、「HR部署は使い物にならない」と罵るシーンが象徴的です。このシーンは当時のHR部署へのイメージを鮮明に表していると言えます。HRMの礎を築いた一人であるLeggie (2005)は、HR部署が企業の事業計画プロセスに参画しておらず、そのため人に関する問題が発生した際に、全ての業務がHR部署に重荷となり、HRは時間とワークロードに追われてしまいます。その結果、危機管理に問題が生じ、ラインマネージャーがHRの実務内容を把握しておらずHRに関心が向かないという負の連鎖を生み出しているのです。
財政危機の時ほど、人事への関心がなくなるが、会社は人財で成り立っているという事を忘れてはいけません。HR・人事は従業員全体のVoice(集合的な声)となり、組織の意見を吸い上げ、組織をより良くするための変化を促す機関にならなければなりません。
(D.S)