【HRM相談室】よい人財をどのように採用するか? ~Voice!for HRM Vol.49 ~

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業種業態問わず、経営者やHR/人事の課題として非常に多いのが「どのように良い人財を採用すればよいかわからない」です。一見、単純そうな課題ですが実は奥が深く、HRの機能を考える上で最も重要なテーマです。

人事 (Personnel Management) と Human Resource Managementの決定的な違いは、そこに「戦略的視点」があるかどうかで定義されます。いわゆる人事 (以後PMとします)は、事務・管理に力点が置かれ、マニュアルに沿って採用や配属、勤怠などの活動を行います。一方、 HRM は一つ一つの活動が戦略的に事業の最適化につながるようにあらゆる仕掛けを作るという役割を担います。

今回は、人事の方々から最も多くご相談を受ける採用に関して事例をご紹介いたします。HRの方々の最も大きい責任事項として、「優秀な人財の確保」があります。ここで皆様に考えて頂きたいのは、「優秀」とは何かということです。新規の飛び込みで数字を出せる営業、自社ページのアクセス数を伸ばせるマーケッター、新規ビジネスアイデアを創出する企画者など部門や業務内容によって優秀さの定義は大きく変容します。

そのため、まずは候補者に対してどのようなSetting (場面)でどのようなOutcome (成果)を期待するのかを事前に作成しておく必要性があります。その際には、職務遂行に求められる経験や資格、スキル、能力、性格、コンピテンシーを明確に定義しなければなりません。経験や資格などハードな側面はある程度見極めがつくかと思います。

しかしながら、性格やコンピテンシー(行動特性)などに関しては、実際にある程度の期間仕事をしてみないと判断がつかないというのが現実です。アメリカをはじめとする欧米諸国では、Probation (試用期間)が3-6かけ月ほど設けられており、その期間内でビジョンや価値観、働き方などの見極めを行うことができます。Probationの期間でミスマッチが発生した場合には正式雇用のオファーを出さないという選択肢もあるため、ある程度思い切った採用・選考が可能なのです。

しかし日本の法律内では試用期間内に候補者を見極めることは「グレーゾーン」であり、あまり推奨できません。したがって、書類選考や面接のプロセスで最適な候補者を見極めなければならないということになります。つまり、欧米諸国以上に採用・選考プロセスを強化しなければならないのです。では具体的に何をしなければならないのでしょうか。ずばりその答えは「データ活用」にあります。会社の重要な資産であるヒトをデータに任せるというのは危険ではないかというご質問もたくさんいただきます。しかし、近年ではデータ分析を適切に行うことは人間の経験や勘よりも正確にヒトの趣向や特性を見出せるという研究結果が出てきているのです。全ての意思決定をデータに任せるということではなく、人間による意思決定を最適化するための補完材料としてデータを活用するということです。

(D.S)