CIPD資格取得とHRとしてのキャリア ~Voice!for HRM Vol.45 CIPDLevel7体験記~

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SSKコミュニケイションズHR推進部の杉本です。弊社は、ヨーロッパ最大のHR団体であるCIPDと業務連携を行い、日本における「HRプロフェッショナルのサポート」「学問・実践としてのHR普及」に努めております。

CIPDとの出会い

私は、2019年にイギリスでMBA留学を行い、学内プログラムの一環の中でCIPDと出会いました。私が当時師事していたチューターがCIPDのメンバーであったためです。当時は人事/HRは補佐・事務的イメージが強く、CIPDが掲げる「戦略的にフロントで経営を支えるプロフェッショナル」という概念に驚嘆したのを覚えています。イギリスの労働市場では、HR領域に従事する人財はCIPDの資格を有しているケースが大半です。無論、資格を持っていることが必ずしもHRとしての優秀さを表すわけではありませんが、HR Professional として業務に必要な知識やフレームワークそしてケーススタディ事例を有していることは労働者として希少性・競争優位を生むのではないでしょうか。

CIPD Level7 取得

CIPD Level 7の取得には約1年半かかります。

Level 7はHRの要職に就く人財あるいはHR領域で大学院以上のスキル・知識を有していることが前提となりますので、進行度は非常に早く、レベルの高い受講者で構成されています。Strategic HRMやTalent Management, Recruitment and Selection, Performance Appraisalなどのテーマで講義を受講しますが、参加に先駆けてある程度の基礎知識を付けておくことをお勧めします。

私が在籍していたクラスでも大手のコンサルファームや製薬会社、メーカーのHR Headなど経験豊富な受講生が多く、ケースワークでは様々な視点でプロフェッショナルな議論が繰り広げられていたのを覚えています。実際にゼロから会社を創り、VisionやMission、経営・事業戦略の策定を行った上で、どのように戦略的にHR施策に落とし込んでいくかなどを6人のメンバーで構成されたグループで行うケースワークなどがあります。多国籍かつ様々な業種業態のメンバーが集まったグループのため白熱した議論が昼夜繰り広げられます。時にはぶつかり合いながら、最終プレゼンに向け準備をします。

プレゼンは、地域の企業経営者や大手企業の人事部に向け行われます。実際にヘッドハンティングが行われることも多く、緊張の瞬間です。プレゼンを終えるころにはメンバー皆が仲良くなり、私もメンバー全員でヨーロッパ旅行に行ったのは良い思い出です。

ある課題に、多様な視点からアプローチを行い、短期間の中でそれを検証していく作業そしてそれを実行する能力は今後まさにHRに求められるスキルだと考えます。その点でCIPDのグループワークは非常に良い機会でした。

CIPD Level7 取得してみて

CIPD Level7取得後、私が直面した初めの壁は「イギリスでの就職活動」でした。

自分自身英語力にはある程度自信がありましたが、イギリスで英語を話せても何の希少性も生みません。MBAを全ての教科主席で卒業したこと、CIPDのプレゼンで優勝できたこと、HRに関する文献を他のどの候補者より読み漁っていることを武器にコンサルティング会社10社にアプライしました。最終的に8社で内定を貰い、多くの多国籍企業のグローバル人事に携われるという理由からHays社を選びました。

私は、選考面接の際には必ずフィードバックを貰うように心がけていましたが、非英国市民ながらも私が選ばれた理由は「学業成績」「リサーチスキル」、「知識の豊富さ」そして「論理的な切り返しの速さ」でした。私自身、このスキルの多くはCIPDのコースを受講して養ったと分析しています。MBAを優秀な成績で卒業する学生は多くいますが、HRに特化した知識やスキルを有する候補者はそう沢山はいません。私自身アメリカやシンガポールの企業にもアプライし、直接面談に来てほしいとのオファーも数多く頂きました。HRの観点で日本よりはるかに上を行くアメリカやイギリスでも希少性が高いということは、日本ではより一層価値が高いのではないでしょうか。

昨年の夏に帰国以来、多くの人事の方とお会いする機会に恵まれてきましたがHRとしてのキャリアに自信を持っていない方が多い印象を受けました。

HR領域の業務は会社のheart (心臓)であるHuman Resource (人的資源)を扱うため、業種・業態問わず必須の機能となります。

今後、産業4.0やVUCAの時代に突入し、人間が行う業務が縮小するとの見通しが立っています。これによって、人的労働力そしてHRの必要性は希薄になるのではないかと論ずる人たちがいます。しかし私は、むしろHRの重要性は現在よりも増すと考えます。

テクノロジーの進歩によって、自動化・効率化が進み、「仕事の性質」に変化が生じると企業は新たなビジネスモデルや製品・サービス開発・展開に努めます。そのためにはハードな面で活躍する技術者はもちろんのことプロジェクトを編成し、PDCAを回すソフト面に長けたタレントの確保とリテンションを行うことが求められます。

金銭的なインセンティブのみに依存した人事/HR施策は歴史的にみても必ず綻びがでます。企業の事業戦略と一体となった人事戦略を策定し、具体的な採用戦略や評価制度とそのトレース (追跡)まで落としこむ作業は、理論・フレームワークと実践経験が共鳴することで初めて機能します。HRはいかなる業種・業態であれ経営に必要な機能であり続け、この領域に従事する者は専門家でなければなりません。

CIPDは時代に即したHRのフレームワークやケーススタディを網羅的に学べる場であり、HRプロフェッショナルとしてキャリアを積みたい方にはお勧めできる資格です。

2021年9月からは、日本にいながらもオンラインで受講できるようになりました。詳しくはこちらからご確認ください。

(D.S)