採用分野におけるテクノロジー活用の注意点 ~30人の会社のテレワーク Vol.75~

テレワークを行う上で、テクノロジーの活用は必要不可欠です。RPA、クラウドツール、チャットツール、バーチャルオフィスなど、弊社でも様々なテクノロジーを使いながらDX化を進めています。

また、2022年6月9日に目白大学で実施した講義では、「なくなる仕事、なくならない仕事」と題し、AIが発展していく中で、私たちはどのような仕事を選んでいくべきかについて、講演を行いました。

採用の分野でもテクノロジーを活用しようという動きがあることをご存知でしょうか?企業を作るのは人です。どの企業も採用活動には力を入れていることでしょう。採用分野において、テクノロジーを活用することにより、自社に合った人材を探し見極め、機会ロスや入社後のミスマッチを減らしつつ、採用にかかる工数も削減できたら・・・と考えたことがある方も多いのではないでしょうか?

しかし、テクノロジーは万能ではありません。学習させるデータセットを間違ってしまうと偏った人材を選んでしまったり、突出した人材を採用できてもその人を活かせる企業文化がなかったり・・。テクノロジーを活用しつつ、ダイバーシティを実現するために、私たちはどのようなことに気を付けるべきでしょうか?

今回は、イギリスのHRサイトから、テクノロジーを活用した包括的文化の創造についての記事をご紹介いたします。

テクノロジーを活用した包括的文化の創造

「AIや機械学習の力を、真に多様な職場を作ることに利用することは可能である」と、Madeline Baileyは主張する。

ダイバーシティ&インクルージョン(多様性と包括性)は全てのグローバル企業にとって、最大の優先事項である。先進的な企業は認知の多様性を積極的に採用し、データ主導の戦略を組み込んでD&Iアジェンダを強化している。人工知能(AI)や機械学習のような破壊的な技術は、目新しい洞察を得、より多様性に富み包括的な職場の意思決定を強化する道を開いている。デジタル時代はもはや「流行」ではない。確かにそこにある。しかし重要な問題が残っている。機械は本当に人間の行動に習い意思決定を行い、より公正でより良い社会につながる結果を生み出すことができるのだろうか?そこにはどんなリスクがあるのだろうか?企業は、多くの分野や地域でAIの規制を強化するために、どのように準備しなければならないだろうか?

AIは魔法の杖ではない

紛争や気候変動などの主要な脅威が、状況は普遍的に平等ではないと示しているが、西洋社会は歴史的にどの時代よりも根本的に良い状態である。我々は、長く生き、病気や健康障害に苦しむことも少なく、一般的に裕福である。しかしダイバーシティ&インクルージョンは多くのCEOや取締役会にとって、重要な課題として残っている。我々は経験的研究によって、多様性に富み包括的なチームは競合を凌ぐことが分かっている。技術が重要なエネイブラーになり得ることも知っている。しかし、どこであるいはどのように始め、どのように本当の変化を起こすのかを知ることはリーダーにとってとても難しい場合がある。多くの企業がAIや機械学習を使い、採用の最適な候補者を予測することにより、採用ネットを拡大しようと積極的に取り組んでいる。

この領域ではリスクが伴い、新しいソリューションを安全にテストするには制御が必要である。例えば、役割にマッチする候補者を予測するテストに使われたAIが一貫して女性に対して偏見を持っていた例がある。これはアルゴリズムのせいではなく、歴史的に白人男性を支持していた過去の任命と昇進の内部データに基づいて開発されたためである。この例から学ぶべき重要なポイントは、組織が採用したいと望む母集団を表現したデータセットの存在なくして、包括的採用を予測するために振ることができる魔法の杖は存在しないということである。

AIは人間の欠点を反映する

データからあらゆるジェンダー指標が一掃されたとしても、AIは偏った雇用を薦めるパターンを見つけうる。これは、AIモデルを教育するのに使われたデータによって、示唆されている。例えば、”executed”のような男性候補者が一般的に使う動詞を支持している、ということがある研究で分かった。国際的企業が採用プロセスの一部をどのように自動化するかを積極的に探索している。バイアス・公平性・透明性そして正当性(あるいは説明可能性)に関して考慮しなければならない重要な側面があり、それを誤った場合の潜在的影響を考えると、専門家のサポートが重要になることは明らかである。特定のグループの人を差別するあるいは不公平に扱うAIの採用によって、企業の評判は急速に損なわれるかもしれない。組織はまた、AIに共通の規制および法的枠組みを導入することを目的とした、ヨーロッパで提案されている人工知能法(AI法)など、保留中のAI規制に対応する準備を整える必要がある。他の規定の中でも、ー制定された場合ー特定のグループの脆弱性を悪用するシステムなど、特定な有害なAIシステムの使用を禁止し、リスクの高いAIシステムについては、強制登録を含む重要な義務が課される。

未知の世界を探検できるのは人間だけ!

では、AIや機械学習は何に役に立つのだろうか?AIや機械学習は特定の、反復的な、複雑で単調なタスクを自動化するために非常に価値ががあることを私たちは知っている。これはチャットボットが人的資本にとって代わるということではなく、いくつか例を挙げると、放射線技師、保険数理氏、医者が仕事を失っているということでもない。しかしながら、AIや機械学習は、リーダーがあるタイプの仕事を自動化することを可能にし、判断、共感、創造性、コミュニケーションや洞察(潜在的な可能性をめぐる誇大広告にも関わらず、AIがまだ置き換えられないもの)など人間のみが持っている能力を人々が使い、より大きく、より意味のある価値を生み出すことを可能にする。この意味で、AIは”augmented intelligence(拡張知能)”を意味する可能性がある。

例えば、AIシステムは顔の表情や仕草から人間の約束や意図を判断するのが非常に苦手である。確かに、ほとんどの人間は約束や意図を評価することにおいて完璧ではない。親しい家族や長年の同僚の場合のように、約束をしている特定の人に関する多くの文脈情報を知っている時、私たちはこのタスクに優れているため、AIの信頼性を評価することができる。AIは、さらに数十年後、最終的にはこの評価の課題でより良くなる可能性があるが、約束をしている人に関する文脈的および歴史的情報を組み込む能力を手に入れない限りは無理であろう。

これは産業革命ではない

リーダーがテクノロジーを活用して、将来の仕事で最も厄介な問題の1つー人材獲得競争ーを解決するのに役立つ大きな機会もある。ほとんどの組織は同じエリートの人材プールを求めて競争している。テクノロジーによって組織が人材プールを拡大できるようになれば、その総合的な効果は変革的なものになる可能性がある。AIや機械学習が広範囲にわたって性別や人種に関係なく、インクルージョンを予測する特性(研究によるとイノベーションも似通っている)をテストできるいくつかの興味深い活用事例がある。障害に直面した時の個人の回復力などの個々の属性は、大学で学んだ科目、通った大学、または大学に行ったかどうかよりも、最終的なキャリアの成功をより正確に予測できる可能性がある。しかし、包括的でデジタルな時代ー小さく、絶えず変化し、学術的で多文化的なチームを中心とするーで競争する企業にとって望ましい、目新しく複雑な問題を迅速に評価して解決するこれらの人間的資質は、雇用プロセスの大部分で把握されておらず、産業革命から大きく進化した従来の人材管理システムでは育まれていない。

リーダーシップの事例

人と違った人々を積極的に探し、採用することは、解決するべき問題の一部に過ぎない。組織は人材を確保しなければならない。ここにイノベーションとダイバーシティに固有のパラドックスが存在する。創造的で斬新なソリューションを提供する可能性が最も高い人々は、確立された組織では「はみだし者」とみなされ、そのアイデアや視点が排除される可能性が最も高いことがいくつかの研究によって示されている。ここで、部外者の視点を大切にし、チームの信頼を構築する真のリーダーシップが必要とされる。AIはビジネスリーダーが解決しようとしている問題の経済性を根本的に変化させうるが、まだツールに過ぎない。リーダーは創造的な人々を雇用し、信頼できる環境の中で未知のものを探求できる職場文化を構築する必要がある。真のイノベーションはまだ答えが分かっていないことーつまり、試して、見ることーが重要なのだ。

https://www.peoplemanagement.co.uk/article/1789472/creating-inclusive-culture-powered-technology
by Madeline Bailey 13 June 2022

Madeline Bailey は、Norton Rose Fulbright のテクノロジー・コンサルティングの共同責任者です。

弊社では、企業の採用活動をご支援するため、職業紹介を始めました。人材の紹介だけではなく、人材要件定義、採用広報活動、職務定義書の作成など、採用活動を幅広くご支援しております。