今回は、期間損益計算についてです。
損益計算書とは、一定期間の企業の経営成績を明らかにするために作成される書類です。
通常の企業は一年で解散することは予定していませんので、必ずどこかからどこかまでを一区切りとして、その中で収益と費用をすべて洗い出し、利益を計算することになります。
これを期間損益計算といいますが、何をもって収益や費用を期間帰属させるかについてみていきたいと思います。

<収益の期間帰属>

まずは収益の期間帰属です。
従来、日本の会計基準では実現主義という考え方がなされており、損益計算書原則にもその内容が記されています。

”実現主義とは、収益を実現の時点で認識することを言い、実現の要件としては財貨又は用役移転及びそれに対応する現金または現金同等物の取得があげられる。”

実現主義 の採用理由としてはいくつかあげられますが、一つは利益の分配可能性が保証できるからです。
実現の要件を満たしたということは、収益に現金もしくはその同等物の裏付けが得られていると考えることができます。
手元にお金がある、もしくはすぐにお金に代えられるものがないと分配しようがありませんからね。

ただし、現金主義、つまり現金を受け取った時に収益を認識するという考え方よりは確実性には欠きます。
当然ながら売掛金を計上しただけでは現金収入が100%保証されたということではないからです。
その点、現金主義ならそこに現金があるわけですから安心ですね。

もちろん、現金主義にもデメリットがあります。
現在の企業において、取引の際にすべてをその場で現金で支払っている、ということはほとんどないと思います。
現金ではなく、現金同等物の受け渡し。つまりは手形であったり、売掛金という形であったりするものを介して取引が行われます。
そうなると、商品の販売から現金の獲得まで相応の期間が空くことになり、その間ずっと売上を計上できないことになってしまいます。
逆に言えば、 実現主義 は現在の信頼経済に即した考え方と言えます。

また、 実現主義 では基本的には販売の事実を基礎として収益の帰属する期間が決定されます。
販売というのは企業の営業活動の目的として行われますので、販売の事実を収益の認識基準とすることは収益に業績指標としての役割を持たせることができます。
売上を計上した=物が売れた、ということです。
「いつかどこかでうちの商品を買ってくれそうな口約束をしたから多分売れると思うよ」なんて曖昧な状態で売上を計上したら、会社がどうなってしまうのかなんとなく想像がつきませんか?

これらの特徴により、日本では長らく実現主義による収益認識が行われてきました。
現在は収益認識基準が制定されていますが、実現主義では曖昧だった部分を明確化した、というものであり、従来の考え方から大幅な転換がなされたわけではありません。
なお、収益認識基準について詳しくは過去の記事に書いていますので、参考にしてみてください。

<費用の期間帰属>

費用の期間帰属は、まず発生主義という考え方で費用をとらえるとことから始まります。

”発生主義とは費用を現金支出の事実ではなく、発生の事実に基づいて認識する考え方である。”

発生の事実とは、経済価値の費消事実の発生、もしくは経済価値の費消原因事実の発生をいいます。
ちょっと難しい言い回しですね。

経済価値の費消事実とは、例えば「ボールペンを買った」、「機械をレンタルした」などという事実のことを言います。
ちなみに費消という考え方は消費とほとんど同じ意味合いですが、企業が行う消費のことを特に費消といいます。

一方経済価値の費消原因事実とは、直接の費消が起きていないけれども、未来に費消が起きるであろう原因がすでに発生していることを指します。
特に引当金などは、この考えにより費用として認識されます。
貸倒引当金の繰入を行うのは、将来貸倒れが発生すると考えているからですね。

発生主義により費用を認識したら、今度は費用収益対応の原則により収益に対応する分だけの費用を期間帰属させます。

費用収益対応の原則とは、一定期間における企業の成果である収益とそれを獲得するために費やした努力である費用とを期間的に対応させることによりその差額として期間利益を計算することを求める原則です。
期間収益は収益認識基準により把握されているので、特に期間費用を決定する役割を持っています。

収益との対応関係は直接的な対応をもつか、間接的な対応かで2パターンに分かれます。
売上高に対する売上原価、などが直接的な対応関係で、売上高に対する販管費などが会計期間を介して対応関係をもつ、間接的な対応関係です。

<おわりに>

期間損益計算では、把握した期間収益から、対応する期間費用を差し引くことで期間利益を計算します。
損益計算書を作るうえでは当たり前の考え方かもしれませんが、実現主義・発生主義という考え方は会計の基本になりますので、しっかりおさえておきたいですね。

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