突然ですが、「”管理職”は残業代が出ない」と聞いたことがある人は多いと思います。
もしかしたら自分や身近な人が当てはまっている…という方も多いのではないでしょうか。
今回はそんな 管理職 についての内容となります。
以前の割増賃金に関するコラムでも触れたように、残業代は労働時間・休憩時間・休日を元に支払わなければならない、と労働基準法で決められています。
しかし労働基準法で定められている規定というのは、使用者から労働者を守る目的で作られています。
ここでいう使用者って社長のことでは?と思われがちですが、意外にも次のように広い意味で定義されています。
この法律で使用者とは、事業主又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者をいう。
(労働基準法第10条)
つまり社長や取締役の経営担当者だけでなく、労働条件等の労働者に関する事項を決めるすべての人ということになるので、部長や中間管理職も含まれる場合があります。うーん、広いですね。
このように使用者である 管理職 の人は、経営者と一体的な立場であるとして、労働基準法の労働時間・休憩時間・休日の規定が適用されない、つまり会社は残業代を支払う義務がないということです。
「 管理職 は残業代が出ない」と言われる根拠となる条文は労働基準法第41条で定められており、労働時間の規定が適用されない労働者の種類が挙げられている中に、”監督若しくは管理の地位にある者”(管理監督者)と記されています。
ここで、具体的にはどのような人が管理監督者当てはまるのでしょうか?
もちろん、「管理職」という肩書を持つだけでは上記の管理監督者となるわけではありません。
厚生労働省の発表する以下4つの基準を満たして、初めて管理監督者となります。
・重要な職務内容を有していること
・経営者と一体的な立場にあり、重要な責任と権限を有していること
・労働時間の厳格な管理をされていないこと
・職務相応の待遇がなされていること
詳細は、厚生労働省が発表している「労働基準法における管理監督者の範囲の適正化のために」PDFをご覧ください。
管理監督者は労働基準法の労働時間・休憩時間・休日の規定が適用されません。
しかしそれを利用して、一般の労働者に名ばかりの管理職の肩書を与え、上記の規定を適用させないことで、人件費を削る会社が存在します。
名ばかり管理職問題による裁判は多く、少し前となりますが、話題となった日本マクドナルド事件について紹介します。
日本マクドナルドは店長として勤務していた従業員を、”管理監督者”として雇用していたが、2008年、従業員が”管理監督者”ではないと訴え、過去の残業代の請求を求めた裁判となります。
店長は労働条件の権限を有してはいましたが、「経営者と一体的な立場」であるような意思決定には関わっておらず、実質的に労働時間に制限を受けていること、職務相応の待遇を受けていない(給料が一般社員と大きく変わらない)という状況でした。
結果として、店長が労働基準法上の管理監督者に当てはまらないとされ、店長の残業代請求が認められることとなりました。
参考:https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/801/037801_hanrei.pdf(東京地裁判決)
労働基準法の管理監督者であっても、深夜労働と有給休暇についての規定は一般の社員と同じように考える必要があります。
なので、管理監督者であっても深夜労働(22時~5時)における賃金は割増しする必要があり、有給休暇は年5日以上とる義務があるため、注意が必要となります。