今回は非償却資産を交付金で購入した場合の会計処理について書いていきます。
中期計画の想定範囲内の非償却資産の取得であるならば、 運営費交付金 債務は「資本剰余金」へ振替られます。
なぜでしょうか?
この場合、損益計算書を通さずに直接純資産(資本剰余金)が増加します。なぜそんな会計処理となるのか。少し説明してみますね。
まず、独法会計基準から一部抜粋します。
><注12> 資本剰余金を計上する場合について
1 独立行政法人が固定資産を取得した場合において、拠出者の意図や取得資産の内容等を勘案し、独立行政法人の会計上の財産的基礎を構成すると認められる場合には、相当額を資本剰余金として計上する。
2 具体的には、以下のような場合が想定される。
(1) 国からの施設費により非償却資産又は「第87 特定の資産に係る費用相当額の会計処理」を行うこととされた償却資産を取得した場合
(2) 国又は地方公共団体からの補助金等により非償却資産を取得した場合
(3) 中期計画及び中長期計画に定める「剰余金の使途」として固定資産を取得した場合
(4) 中期計画等の想定の範囲内で、運営費交付金により非償却資産を取得した場合
(5) 中期計画等の想定の範囲内で、寄附金により、寄附者の意図に従い又は独立行政法人があらかじめ特定した使途に従い、非償却資産を取得した場合
(出典:独立行政法人会計基準 p.10)
※太字は記事作成者によるもの
資本剰余金は、
①拠出者の意図や取得資産の内容等を勘案し、
②独立行政法人の会計上の財産的基礎を構成すると認められる場合
に計上します。
①について、運営費交付金で非償却資産を購入した場合、交付金は国から受領しているので、拠出者というのは「国又は国民」ということになります。
つまり、①は国の意図が反映されていて、非償却資産の取得を認めている状態を表します。
次に②ですが、「財産的基礎」って何だよってところで引っかかります。という訳で少々調べてみるとこのような説明がありました。
>会計上の財産的基礎
3.7 独立行政法人の会計上の財産的基礎とは、政府等からの出資のほか、出資と同じく業務を確実に実施するために独立行政法人に財源措置されたものであり、独立行政法人の拠出者の意図や取得資産の内容等が勘案されたものをいう。
(出典:独立行政法人の財務報告に関する基本的な指針 p.33)
※太字は記事作成者によるもの
・政府からの出資
・業務を確実に実施するために独立行政法人に財源措置
上記2つの収入源が財産的基礎を構成するということですね。国の意図や取得内容が認められていないといけませんが。
「政府からの出資」については「資本金」になるのでしょうね。企業会計でいうと、株主からの出資が資本金になる、と同じです。
そして「財源措置」が運営費交付金や補助金等ということですね。
なので、②は政府からの出資、又は財源措置によって非償却資産を取得することを認めている状態、ということになりますね。うーん、①は②に含まれていると言っても良さそうな。
では、「非償却資産の取得を認めている」とはどういうことでしょうか?
それは、中期計画の想定範囲内であること、です。
中期計画は主務大臣の定めた中期目標に従って作成されます。そのため中期計画で想定されている業務は主務大臣の想定範囲内、つまり国の意思が反映されている業務であるということです。
総務省のHP「独立行政法人評価」から中期計画に関連する箇所を一部抜粋したものがこちら↓
そんな中期計画内で交付金を使用した非償却資産の取得が盛り込まれているということは、非償却資産の取得が認められているということです。つまり、当該非償却資産は財産的基礎を構成するということになりますので、資本剰余金へ振り替えることとなります!
下記のような仕訳になります。
土地 ×× / 現金預金 ××
運営費交付金債務 ×× / 資本剰余金 ××
では、中期計画の想定範囲外だった場合はどうなのでしょうか?
想定範囲外ということは、国の意図や取得内容等が勘案されていないということになりますので、財産的基礎を構成するとは言えません。そのため資本剰余金に計上することが出来ません。
では、運営費交付金債務を何に振り替えるのかというと、「資産見返運営費交付金」に振り替えます。償却資産の購入時と同じですね。これは売却または除却するまで負債が残り続けます。
中期計画終了時にも精算化することは求められていないので、本当にずっと手放すまで負債が残り続けるということですね。
以上、非償却資産の会計処理方法でした。
中期計画範囲内であれば「資本剰余金」、範囲外であれば「資産見返運営費交付金」として残り続けるという話でした。